糸マニアのアマナエイコが綴る、
糸のおはなしシリーズ、その8。
→その1 繊維のおはなし
→その2 繊維の分類のおはなし
→その3 人類と繊維のおはなし
→その4 麻のおはなし
→その5コットンのおはなし
→その6 ウールのおはなし
→その7カシミヤのおはなし
わたしが所有する糸の中で、
圧倒的に数が多いのは、シルクです。
ええ、大のシルク好きですから♪
艶やかな色合いを眺めるのはもちろん、
しっとり滑らかにとろけるような手触りも、大好き。
ちなみに、
毎晩、シルクの毛布に包まれて、
ぐっすり夢の中です。
さて、今日はそんな大好きなシルクのおはなし。
シルクは、その原料によって大きく2つ分類され、
それぞれ、家蚕(カサン)、野蚕(ヤサン)と呼ばれています。
みなさんが普段目にされるシルクは、
大体が家蚕シルクなので、
まずは、そちらから。
家蚕。
読んで字のごとく、
家の蚕(カイコ)。
そもそも、蚕が何者かというと、
蛾です、蛾!!
意外じゃないです?
蛾の仲間である蚕は、完全変態の昆虫なので、
幼虫から蛹になる時に繭を作ります。
蚕の体内で、たんぱく質が糸になる工程を説明したいけど、
まぁ、マニアックすぎるとの、話が長くなりすぎるので、
ここでは割愛。
その繭から取れる糸が、家蚕シルクとなるのです。
蚕は、蛾なのに、
飛ぶことができません。
羽を持っているにも関わらず。
紀元前の中国で始められた養蚕は、
野生に住むクワコという昆虫を育てることから始まりました。
長い年月をかけて、
よりたくさんの糸を吐くように、
より人間にとって有益になるようにと品種改良され、
ついには、
飛ぶことすらできなくなるほどに変わってしまった蚕。
この地球上で、唯一、
野生回帰能力を完全に失ってしまった、
家畜なんです。
ゆえに、家・蚕。
今でも野生で存在するクワコは、
自力でエサを探して飛び回れるのですが、
蚕は、ただひたすら、
人間からエサを与えられるのをじーっと待つしかできない。
うっかりエサを与え忘れると、
そのまま餓死してしまう!!
しかも、桑の葉しか食べないという偏食ぶり。
パンダだって、笹以外のものも食べるっていうのに!!
なんというか…
切ない生き物です。
一方、野蚕シルクは何かというと、
蚕以外の昆虫の繭からとれる糸のことです。
その昆虫たちは、種類もいろいろですが、
お蚕さまと違って、
野外で生息できますし、
桑の葉以外のものも食べます。
だから、吐き出す糸も、
ツルツルの繊細なお蚕さまのものに比べると、
ゴツゴツとしたワイルド感があります。
この辺りも、いずれ詳しく。
ところが、
そんな野蚕たちも、
完全に人間の手を離れているかというと、
そうでもなく…
やっぱり、
品種改良や飼育管理もされているので、
どっちにしても、
シルクって、人間ありきな繊維ではありますね。
…えっと。
まだ、家蚕と野蚕の違いしかおはなししていませんが、
思いの外長くなってしまいました。
パターン的には、ここまで、
ひと素材、ひと記事できているのですが、
ちょっとシルクはネタが多すぎて、
まだまだ書きたい気分。
なので、次回は、
家蚕をもっと掘り下げて、
養蚕について書こうと思います。
ここにきて、
抑えきれなくなってきたマニアック魂。
ごめんなさいね〜